小児成長ホルモン治療適応判定
小児慢性腎不全性低身長症
ヒト成長ホルモン治療適応基準
Ⅰ.ヒト成長ホルモン治療開始時の適応基準
1.骨年齢
男子 17歳未満、 女子 15歳未満
2.身長発育
現在の身長が同性、同年齢の〔標準値-2SD〕以下、あるいは年間の成長速度が2年以上にわたって同性、同年齢の〔標準成長率-1.5SD〕以下である場合。
3.腎機能(平成27年1月1日改訂)
血清クレアチニン≧性別年齢別基準値(中央値)×1.5倍か、
そうでない場合は、推算糸球体濾過量(eGFR)<75ml/min/1.73㎡
eGFR算定法は、クレアチニン(2.0歳以上)、血清シスタチンC(1.0歳以上)のどちらかで判定します。
5次式が身長から計算できるエクセルシートを日本小児腎臓病学会ホームページ(http://www.jspn.jp/kaiin/guideline.shtml )よりダウンロードできます。
* 血清クレアチニンの性別年齢別基準値(中央値)と腎機能低下基準値(中央値×1.5)(mg/dl)
(別表)年齢・性別ごとの血清Cr中央値および腎機能低下基準値
年齢 | 中央値 | 腎機能低下 基準値 |
||
3-5ヶ月 | 0.20 | 0.30 | ||
6-8ヶ月 | 0.22 | 0.33 | ||
9-11ヶ月 | 0.22 | 0.33 | ||
1歳 | 0.23 | 0.35 | ||
2歳 | 0.24 | 0.36 | ||
3歳 | 0.27 | 0.41 | ||
4歳 | 0.30 | 0.45 | ||
5歳 | 0.34 | 0.51 | ||
6歳 | 0.34 | 0.51 | ||
7歳 | 0.37 | 0.56 | ||
8歳 | 0.40 | 0.60 | ||
9歳 | 0.41 | 0.62 | ||
10歳 | 0.41 | 0.62 | ||
11歳 | 0.45 | 0.68 | ||
男子 | 女子 | |||
中央値 | 腎機能低下 基準値 |
中央値 | 腎機能低下 基準値 |
|
12歳 | 0.53 | 0.80 | 0.52 | 0.78 |
13歳 | 0.59 | 0.89 | 0.53 | 0.80 |
14歳 | 0.65 | 0.98 | 0.58 | 0.87 |
15歳 | 0.68 | 1.02 | 0.56 | 0.87 |
16歳 | 0.73 | 1.10 | 0.59 | 0.89 |
** 推算糸球体濾過量 eGFR (ml/min/1.73m2) の算出法
・血清クレアチニン (Cr)(2~18歳) による推算
eGFR = 110.2×(Cr基準値 / 患者Cr) + 2.93
(Cr基準値yには、身長x(m)をもとに下記の5次式により求めた値を使用する)
男児:y = -1.259x5 + 7.815x4 - 18.57x3 + 21.39x2 - 11.71x + 2.628
女児:y = -4.536x5 + 27.16x4 - 63.47x3 + 72.43x2 - 40.06x + 8.778
・血清シスタチンC(CysC)(1~18歳)による推算
eGFR = 104.1 / CysC(mg/l) -7.80
18歳以上は次に掲げる成人の式を用いる。
・血清クレアチニンによる推算
男性:eGFRcreat(ml/分/1.73m2)=194×Cr-1.094×年齢-0.287
女性:eGFRcreat(ml/分/1.73m2)=194×Cr-1.094×年齢-0.287×0.739
・血清シスタチンCによる推算
男性:eGFRcys(ml/分/1.73m2)=(104×Cys-C-1.019×0.996年齢)-8
女性:eGFRcys(ml/分/1.73m2)=(104×Cys-C-1.019×0.996年齢×0.929)-8
◎判定結果は、ヒト成長ホルモン治療適応判定書等の文書により、お知らせいたします。
Ⅱ.ヒト成長ホルモン治療継続の適応基準
以下の項目のいずれかを充たしたときを、治療継続の適応があると判定いたします。
a.成長速度 ≧4.0㎝/年
b.治療中1年間の成長速度と治療前1年間の成長速度の差が、1.0㎝/年以上の場合
c.治療2年目以降で、治療中1年間の成長速度が下記の場合
2年目 ≧2.0㎝/年
3年目 ≧1.0㎝/年
2.以下の項目のいずれかを充たしたときは、治療継続の適応はないものと判定いたします。
1)上記の治療継続の基準を充たさない場合
2)骨年齢 男子17歳以上、女子15歳以上
3)重篤な有害事象が生じたとき
◎判定結果は、ヒト成長ホルモン治療適応判定書等の文書により、お知らせいたします。
小児慢性腎不全性低身長症 フローチャート PDF
身長基準・成長速度基準(男女) PDF
Ⅲ.ヒト成長ホルモン投与量増量の基準
2.ヒト成長ホルモン継続基準を充たし、かつ以下の項目のいずれかに該当した場合は0.35mg/kg/週まで増量できるものとします。
1)慢性腎不全のため、同年齢の標準身長の-2SD以下の低身長をきたし、0.175mg/kg/週の投与を継続
しても骨年齢が男子17歳、女子15歳に達するまでに身長が標準身長の-2SDまで到達する見込みがない
場合。
2)1年以内に腎移植を予定しており、それまでに0.175mg/kg/週の投与を継続しても標準身長の-2SDまで到達する見込みがない場合。
3.増量のための算定基準
1)上記Ⅲ-2-1)の算定基準
成長ホルモン治療開始以降の治療可能推定期間(T)における身長SDスコアの増加量をすでに詳細に検討されているターナー症候群治療データ(間脳下垂体機能障害調査研究班平成7年度総括研究事業報告書)を用いて推測することにする。
(1)治療開始時における治療可能推定期間(T年)の算定
以下の式より治療可能推定期間を算出
T =(男子17 女子15)- 治療開始時の骨年齢 - 0.5
(2)判定
下表【予測治療効果(身長SDスコア増加量)】において、判定時期と治療開始時における治療可能推定期間(T年)より予想身長増加量(SDスコア)を読みとり、判定時期の身長SDスコアに加えた値が-2.0SD未満ならば増量できる。なお、判定時期については半年毎の近い時期にあわせる。
2)上記Ⅲ-2-2)の算定基準
下表【予測治療効果(身長SDスコア増加量)】において、判定時期より腎移植実施予定時期までの期間を「治療可能推定期間(T)」に読みかえる。予想身長増加量(SDスコア)を読みとり、判定時期の身長SDスコアに加えた値が-2.0SD未満ならば0.35mg/kg/週まで増量できる。
予測治療効果(身長SDスコア増加量) PDF