財団概要

理事長挨拶

 成長ホルモン分泌不全性低身長症の治療を契機として、1977年(昭和52年)7月28日に財団法人成長科学協会が発足しました。ヒト下垂体から抽出された成長ホルモンが臨床治療に用いられることになったことは、成長障害に悩む患者さんにとって大きな福音となりましたが、ヒト下垂体抽出成長ホルモンの供給量が少ないため、成長科学協会では下垂体収集事業や、適応判定事業を行い、成長ホルモン治療の発展に尽力してまいりました。遺伝子組換え成長ホルモンが1988年(昭和53年)に使用できるようになり、供給は十分になりましたが、適応判定事業を継続し、成長ホルモン治療のデータベースの蓄積、成長ホルモンの適正使用の推進などの活動を行ってまいりました。
 当財団は、全国の専門医の協力を得て、専門委員会を組織しています。データベースの解析により、日本の成長ホルモン治療に関する多くの知見が得られました。成長ホルモン治療専門委員会は成長ホルモン治療による成人身長が年代と共に改善されてきたこと、年齢・重症度により治療反応性が異なることを発表し、アドバース・イベント調査専門委員会は、成長ホルモン治療が、脳腫瘍の再発や白血病発症のリスクをあげていないことなど重要な論文を発表しております。GH・関連因子検討専門委員会は、GH測定キットの測定値差を無くすための補正式を作成し、この補正式は厚生労働省の間脳下垂体機能障害調査研究班の診断基準にも取り入れられております。また研究助成委員会は、多くの研究者に研究助成を行い、成長及び成長障害の研究を発展させることができました。国際GRS-IGF学会(2005年)、国際Auxology学会(2007年)の共催も行い、海外からの研究者へトラベル・グラントを支給いたしました。
 子どもの身体の成長だけではなく、心の発達も重要だということで、1992年(平成4年)より心の発達研究委員会も発足し、毎年公開シンポジウムを開いております。ヨウ素は、甲状腺ホルモンの構成要素で、こどもの成長・発達に重要な影響があります。2000年(平成12年)にヨード欠乏症対策委員会(現 ヨウ素関連調査研究委員会)が発足し、ヨウ素欠乏による発達・成長障害に悩む世界の地域を援助するため、2015年(平成27年)にスリランカ民主社会主義共和国に、日本ヨウ素工業会などの協力を得て、ヨウ素酸カリウムを無償支援いたしました。その他、成人成長ホルモン分泌不全症委員会、間脳下垂体疾患委員会などで、疫学調査、予後の追跡調査などを行っております。
 2010年(平成22年)7月より、公益財団法人に移行いたしました。私は、2012年(平成24年)より理事長を務めさせていただいておりますが、2014年(平成26年)より、病気のお子さんを早期に発見できるよう「一人ひとりの子どもに成長曲線を描こう」という事業を、公益財団法人 母子衛生研究会と共に推し進めております。 今後とも、子どものすこやかな成長と心の発達を願って、本協会の活動を続けていきたいと思っておりますので、皆様のご支援をお願いする次第であります。

理事長 田中敏章