成長ホルモン剤適正使用推進事業

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小児成長ホルモン治療適応判定

Ⅰ.ヒト成長ホルモン治療開始時の適応基準
1.暦年齢
 3歳以上

2.骨年齢
 男子 17歳未満、   女子 15歳未満

3.出生時の体重・身長
 出生時の体重及び身長がともに在胎週数相当の〔標準値10パーセンタイル〕未満で、かつ出生時の体重または身長のどちらかが、在胎週数相当の〔標準値-2SD〕未満である場合。なお、出生時に身長が測定されていない場合は、出生体重が在胎週数相当の〔標準値-2SD〕未満である場合。

4.身長発育
 現在の身長が同性、同年齢の〔標準値-2.5SD〕未満で、かつ治療開始前1年間の成長速度が同性、同年齢の〔標準成長率±0SD〕未満の場合。

5.出生後の成長障害の原因が、子宮内発育遅延以外である場合は、適応がないものとする。
 とくに、GH分泌刺激試験におけるGH頂値(複数のGH分泌刺激試験が記載されている場合は、その最大値)が6ng/ml(GHRP-2負荷では16ng/ml)以下の場合には成長ホルモン分泌不全性低身長症(GHD性低身長症)の可能性があるので、便宜的に「適応なし」と判定する。この場合は、別のGH分泌刺激試験により6ng/ml(同じく16ng/ml)を超えれば再度SGA性低身長症として適応判定依頼書を提出し、6ng/ml(同じく16ng/ml)以下であれば他の条件も確認の上でGHD性低身長症として適応判定を行うことが勧められる。また、共存疾患および染色体分析への記載内容に基づく判定は適応判定委員会が行う。

◎判定結果は、ヒト成長ホルモン治療適応判定書等の文書により、お知らせいたします。
Ⅱ.ヒト成長ホルモン治療継続の適応基準
1.以下の項目のいずれかを充たしたときを、治療継続の適応があると判定いたします。
  a.成長速度 ≧4.0㎝/年
  b.治療中1年間の成長速度と治療前1年間の成長速度の差が、1.0㎝/年以上の場合
  c.治療2年目以降で、治療中1年間の成長速度が下記の場合
    2年目 ≧2.0㎝/年
    3年目 ≧1.0㎝/年

2.以下の項目のいずれかを充たしたときは、治療継続の適応はないものと判定いたします。
  1)上記の治療継続の基準を充たさない場合
  2)年間成長速度が、思春期による最大成長時を過ぎて2㎝未満になった場合
  3)骨年齢 男子17歳以上、女子15歳以上
  4)重篤な有害事象が生じたとき

◎判定結果は、ヒト成長ホルモン治療適応判定書等の文書により、お知らせいたします。

SGA性低身長症 フローチャート   PDF

身長基準・成長速度基準(男女) PDF

Ⅲ.(参考)ヒト成長ホルモン投与量増量の基準
 添付文書には、「通常1週間に体重kg当たり、ソマトロピン(遺伝子組換え)として0.23mgを6~7回に分けて皮下に注射する。なお、効果不十分な場合は1週間に体重kg当たり0.47mgまで増量し、6~7回に分けて皮下に注射する。」と記載されています。ヨーロッパからは、高用量の方が短期的な成長促進効果は高いことと、成人身長には差がなかったことが報告されています。どのような場合に「効果不十分」と判定して増量するかについては、以下の事項を参考にして判断して下さい。成長科学協会では、増量すべきかどうかの判定材料を十分に持たないために、その判断は控えますので御了承下さい。

(1)身長SDS(HSDS)の1年ごとの改善(ΔHSDS)の程度
 ΔHSDSが、1年目0.5SD未満、2年目0.25SD未満、3年目0.15SD未満、4年目以降0.1SD未満であれば、成長反応は平均を下回ると推定し、効果不十分として、増量を考慮する上で参考にする。なお、思春期になって成長スパートが開始すると、GH治療による効果判定は困難になるので、この判定基準は、原則的に思春期前の症例に適用することとする。

(2)増量を検討する際に考慮すべきその他の事項
 以下のような場合に、増量を考慮することができる。
  ・低身長の程度が著しい場合
  ・予測された成人身長が著しく低い場合
  ・骨年齢や性成熟からみて成長できる期間がかなり短い場合
  ・低身長に伴う心理的ストレスが大きい、または自己肯定感が損なわれている場合

(3)血中IGF-Ⅰ測定値による投与量の調整
 GH投与量の過量に伴う潜在的な有害事象の発生リスク上昇を考慮し、特発性低身長症の診断と治療に関するガイドライン(J Clin Endocrinol Metab 2008;93:4210-4217)を参考にして、血中IGF‐Ⅰ濃度が常に著しく上昇していれば、GH投与量の減量を検討する。