指定課題研究報告
成長ホルモン(GH)と関連因子であるインスリン様成長因子-1(IGF-1)の測定はGH分泌異常症の診断と治療に必須であり、視床下部・下垂体機能の指標の一つとしても用いられる。従来、放射性同位元素(RI)を用いたポリクローナル抗体による競合型免疫測定法(ラジオイムノアッセイ:RIA)であったが、モノクローナル抗体による捕捉抗体と標識抗体によるサンドイッチ型の非RI免疫測定法が主流となり、測定時間の短縮・検体量の少量化・測定感度にすぐれた全自動測定キットが数多く開発された。しかし、測定キットにより測定値のバラツキが問題となり、その対策として成長科学協会GH・関連因子測定検討専門委員会による測定値補正式の作成、リコンビナントGHの較正標品の導入による測定値の標準化が行われた。
はじめに
本年度は、一昨年度に再設定した多数例の日本人成人を対象とした血中IGF-1濃度の基準値1)を用い、血中IGF-1濃度に影響する体格指数(BMI)、ウェスト周囲径について検討した。また国際的なGH測定標準化の動向についても調査した。国内でのGH測定標準化が行われた以降の臨床現場におけるGH・IGF-1測定キット内およびキット間差については、社団法人日本アイソトープ協会から第29回イムノアッセイ検査全国コントロールサーベイ成績報告要旨(2007年)が報告された。
(目的)2007年に日本人健常成人における血中IGF-1濃度の基準値を公表し、1歳刻みでSDスコア表示が可能となった。軽度肥満者の総IGF-1濃度については低値あるいは高値であるとの報告があり、まだ明確でない。今回、BMI30以下の健常人を対象に、血中IGF-1 SDスコアとBMI、ウェスト周囲径(WC)との関係を調べた。
1.健常成人における血中IGF-1 SDスコアと体格指数およびウェスト周囲径
(方法)18歳から83歳までの健常男性553例、女性556例を対象とし、身長、体重、WCを計測し、空腹下の血中IGF-1濃度をIRMA法で測定した。年齢、性別によらないIGF-1 SDスコアを既報により算出した。
(結果)IGF-1 SDスコアとBMIの間には逆U字型の関係がみられた(図1)。BMIを2kg/m2刻みで区切ると、平均IGF-1 SDスコアは男性ではBMI24-26において最高(+0.12)を示し、女性ではBMI22-24において最高(+0.22)であった。男女ともBMI18以下で、明らかにIGF-1 SDスコアは最低値(男性-0.5,女性-0.54)を示した。一方、WCとIGF-1 SDスコアは男性において有意な正相関があったが、女性では明らかな関連はみられなかった。正常範囲内ではあるが空腹時血糖およびコレステロール濃度とBMIに正の相関関係がみられた。
(結論)IGF-1 SDスコアは、やせで低下し、BMI30未満の肥満では軽度低下する。IGF-1濃度と疾患との関連を解析する場合にはBMIの分布に注意を要する。
IFCC(International Federation of Clinical Chemistry and Laboratory Medicine)認証の下、GH測定に関する国際ワーキンググループ(WG)が、Bidlingmaier教授をWG長として形成された。標準品としてWHO標品IS 98/574を用い、GH測定値を質量単位で表示することがほぼ合意に至っているが、米国では未だ困難な状況である。GH Research Societyが、GHおよびIGF-1測定の問題を取り上げ、2009年10月に米国バージニア州Keswickでconsensus meetingが開催される予定となった。
2.国際的なGH測定標準化の動向
参加施設は28で、RI法は14施設で GHキット「第一」とAbビーズHGH“栄研”が、non−RI法は14施設でST Eテスト「TOSOH」U(HGH)、アクセスhGH、DPC・イムライズGHが使用されていた。キット内CV%は、試料1(低濃度域)がRI法で20.4%、non-RI法では12.0%であった。試料2(高濃度域)は各々4.1%と9.3%であった。キット間CV%は試料1が14.8%、試料2は9.3%とばらつきが認められた。アクセスhGHが約20%の低値を示した。
3.第29回イムノアッセイ検査全国コントロールサーベイ成績報告(2007年)2)から
IGF-1測定に関しては、参加施設は11でソマトメジンC・U「シーメンス」とIGF-T(ソマトメジンC)IRMA「第一」が使用されていた。キット内CV%は試料1および2でそれぞれ7.5%、8.9%のばらつきを認めたが、キット間には大きな差はなかった。
参考文献
1. 島津 章、ほか:日本人成人における血中インスリン様成長因子-T濃度の基準範囲について.ホルモンと臨床 2007; 55(4): 393-399. 2. 第29回イムノアッセイ検査全国コントロールサーベイ成績報告要旨(2007年).RADIOISOTOPES 2008; 57(10): 617-668.
図1.健常人における血中IGF-1SDSとBMIの関係(左:男性、右:女性)
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