指定課題研究報告
成長ホルモン及び IGF-I 測定の標準化に関する研究



成長ホルモン(GH) および関連因子の測定に関する研究
研究者



はじめに

 成長ホルモン(GH)と関連因子であるインスリン様成長因子-1(IGF-1)の測定はGH分泌異常症の診断と治療に必須であり、視床下部・下垂体機能の指標の一つとしても用いられる。従来、放射性同位元素(RI)を用いたポリクローナル抗体による競合型免疫測定法(ラジオイムノアッセイ:RIA)であったが、モノクローナル抗体による捕捉抗体と標識抗体によるサンドイッチ型の非RI免疫測定法が主流となり、測定時間の短縮・検体量の少量化・測定感度にすぐれた全自動測定キットが数多く開発された。しかし、測定キットにより測定値のバラツキが問題となり、その対策として成長科学協会GH・関連因子測定検討専門委員会による測定値補正式の作成、リコンビナントGHの較正標品の導入による測定値の標準化が行われた。
 昨年度は、厚生労働省難治性疾患克服研究事業「間脳下垂体機能障害に関する調査研究班」と協同して多数例の日本人成人を対象とした血中IGF-1濃度の基準値の再設定を行い報告した。本年度はさらに小児期発症のGH分泌不全症(GHD)患者で成人期以降のGH補充を必要とする例を適切に選択するため、トランジション年齢(17-24歳)における本邦健常人(男149例,女142例)の血中IGF-1濃度の基準範囲の再設定を試みた。また国際的なGH測定標準化の動向について調査した。国内でのGH測定標準化が行われた以降の臨床現場におけるキット間差については、社団法人日本アイソトープ協会から第28回イムノアッセイ検査全国コントロールサーベイ成績報告要旨(2006年)が報告されている。


1.トランジション年齢(17〜24歳)の健常人における血中IGF-1濃度の基準範囲

 対象及び方法:17-24歳の健常人(男149例,女142例:1996年解析例1,2)137例および2007年解析例3)154例を対象とした。IGF-1の測定はIGF-1(ソマトメジンC)IRMA「第一」(製造販売元:株式会社エスアールエル、株式会社テイエフビー販売)により行った。IGF結合蛋白との再結合を阻止する試薬を含む希釈液で検体処理し無抽出によるIRMA法に基づいたビーズ固相法を利用し、総IGF-1濃度を測定する方法である。測定の変動係数CVは約5-8%であった。
 統計処理:年齢別の血中IGF-1濃度の基準範囲は、既報3)と同様にBox-Cox変換を使い現量値曲線のセンタイル値をもとめるLMS法(Cole)を使用して、3次スプライン関数により平滑化して求めた。
 結果:表に解析対象の年齢および性別分布と症例数を示した。男女を合わせた健常人における血中IGF-1濃度の中央値は,17歳:374ng/ml,20歳:257ng/ml,24歳:208ng/mlと17歳から24歳まで比較的急速に低下した(図)。


2.国際的なGH測定標準化の動向

 IFCC(国際臨床化学連合)認証の下、GH測定に関する国際ワーキンググループ(WG)が、Bidlingmeier教授を長として形成された。WGと欧州を中心とした診断薬製造企業、英国の国際標品認証機関であるNIBSCが集合し、2007年6月6日に会合が開催された。欧州の診断薬製造企業のほとんどは、標準品としてWHO標品IS 98/574を用い、GH測定値を質量単位で表示することに同意し、一部はすでに実行されている。標準化が困難である米国への働きかけおよび国際的共同実験として多施設共同による、GH分泌刺激および抑制試験におけるカットオフ値の設定が計画されることになった。わが国も共同実験へ標準測定施設として参画する予定である。


3.第28回イムノアッセイ検査全国コントロールサーベイ成績報告(2006年)4)から

 参加施設は27で、RI法は16施設で GHキット「第一」とAbビーズHGH“栄研”が、non−RI法は11施設でST Eテスト「TOSOH」U(HGH)、アクセスhGH、DPC・イムライズGHが使用されていた。キット内CV%は、試料1(低濃度域)がIRMAキットで10.9%、EIAキットでは5.5%であった。試料2(高濃度域)は各々7.8%と5.1%であった。キット間CV%は試料1が7.4%、試料2は12.1%とばらつきが認められた。しかし、RI法とnon‐RI法の測定値間差の是正は維持されていた。


参考文献

1.島津 章、ほか:IRMAキットを用いたIGF-T、IGF-U、IGFBP-3測定の臨床的検討。第1報 成人期における検討.ホルモンと臨床 1996; 44: 1129-1138.
2.藤枝憲二、ほか:IRMAキットを用いたIGF-T、IGF-U、IGFBP-3測定の臨床的検討。第2報 小児期における検討.ホルモンと臨床 1996; 44: 1229-1239.
3.島津 章、ほか:日本人成人における血中インスリン様成長因子-T濃度の基準範囲について.ホルモンと臨床 2007; 55(4): 393-399.
4.第28回イムノアッセイ検査全国コントロールサーベイ成績報告要旨(2006年).RADIOISOTOPES 2007; 56(10): 637-686.

表.

図.



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