指定課題研究報告
成長ホルモン治療によるアドバース・イベントの調査研究



成長ホルモン治療のアドバース・イベントに関する研究
主任研究者 田中弘之(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 現:岡山済生会総合病院小児科)
 和田尚弘(静岡県立こども病院腎臓内科)
 西 美和(広島赤十字・原爆病院小児科)
 寺本 明(日本医科大学脳神経外科)
 永井敏郎(獨協医科大学越谷病院小児科)
 横谷 進(国立成育医療センター第一専門診療部)



 成長ホルモン治療に関するアドバース・イベント(AE)について、以下の研究を行った。

1.治療成績報告書に記載されたAE情報の抽出
成長ホルモン分泌不全性低身長症、ターナー症候群、軟骨異栄養症、慢性腎不全、プラダー・ウイリー症候群のAE(分担:田中、和田、永井)
2.文献からのAE情報の集積(分担:西、寺本)


1.治療成績報告書に記載されたAE情報の抽出


表:治療成績報告書に記載されたAE情報


 なお、GHDの治療成績報告書には具体的な有害事象名が記載されていないものも5件見受けられた。思春期女児における側弯は従来どおり頻度の高い合併症であり、GHによって促進された身長増加の結果生じやすくなっているものと考えられるが、その危険因子について解析する必要がある。また、HbA1cの上昇が見られたものが2例あり 内1例は軽度の上昇であり、1例は糖尿病の発症であった。この他 肥満の進行も1例で報告された。代謝面でのAEについても注意する必要がある。
 血尿の報告も複数例ありうち1例はナットクラッカー現象によるものであったことも注目される。

その他の適応疾患におけるAE

 GH治療との因果関係が疑われるAEとして、Turner症候群、Prader-Willi症候群、軟骨無形成症で1例ずつ側弯の進行、Turner症候群でMadelung変形、血尿が1例ずつ報告された。


2.プラダー・ウイリー症候群における重度側弯症の頻度の検討(分担:永井)

背景:プラダー・ウイリー症候群(PWS)での側弯症の頻度は50〜80%と高頻度であることが知られている。しかし、手術適応になるほどの重度側弯症の頻度は不明である。
目的:Cobb角10度以上とCobb角60度以上の側弯症の頻度を検出し、これらを比較した。
対象:当科外来でフォロー中患者126名中、脊柱レントゲン所見が検討されている106名を対象とした。69名が男性、37名が女性で、年齢は1歳から51歳である。84名が欠失型、22名が片親性ダイソミーあるいは刷り込みセンター異常の非欠失型である。
結果:39名(39/106, 36.8%)がCobb角10度以上の側弯を示した。年齢別で見ると5歳以下で35.3%、6〜10歳で28.6%、11〜15歳で35.3%、16〜20歳で25%、21歳以上で62%であった。Cobb角60度以上の重度側弯は11名(11/106, 10.3%)に認め、全側弯症患者39名の28.2%(11/39, 28.2%)が重度側弯を示した。
考察:Cobb角10度以上の側弯症の頻度が従来の報告頻度に比較して少ない傾向を示した。これは、患者年齢が低年齢であることに起因すると考えられた。この所見を支持する如く、側弯症の頻度は成人になると著明に増加した事実が明らかになった。
 重度側弯症の頻度が、全患者の約1割を示し、全側弯症患者の約3割が重症化したことは今後、装具装着、手術適応など慎重なフォローが必要である。
結語:PWS患者では、側弯症頻度は高く、かつ重症化するリスクも高いことが判明した。今後、成長ホルモン治療などに際しても慎重な観察が不可欠と思われる。


3.文献報告(18年度19年度)からのAdverse Events情報 (分担:西、寺本)

平成18年度

1.P-047 成長ホルモン補充療法後にCMLを発症した男児の1例.
 宮越 千智、他(神戸市立中央病院 小児科).
  第40回日本小児内分泌学会学術集会.H18年9月27-29日、浜松.
2.P-114 成長ホルモン投与3年後に急性骨髄性白血病を発症したGH分泌不全男児例.
 中村 俊郎、他(熊本大 小児科).
  第40回日本小児内分泌学会学術集会.H18年9月27-29日、浜松.
3.P-115 成長ホルモン剤皮下注後の副作用による蕁麻疹が認められた6歳男児例. 
 加賀 文彩、他(帝京大 小児科).
  第40回日本小児内分泌学会学術集会.H18年9月27-29日、浜松.
4.AS22 幼少時のGH補充療法後に先端巨人症を呈したTurner症候群の一例.
 西澤 衡、他(神戸大 内分泌代謝・神経・血液腫瘍内科).
  第33回日本神経内分泌学会.H18年10月27‐28日、横浜
5.A case report of Turner syndrome with Graves’ disease during recombinant human GH therapy and review of literature.
 Nakagawa M, et al. (日本大学 小児科)Clin Pediatr Endocrinol 15:55-59, 2006.
6.Acute pancreatitis after growth hormone treatment: disease or treatment linked ?.
 de Beaufort C, et al.  Eur J Pediatr 165:652-653, 2006.
7.Primitive neuroectodermal tumor of the brain in a girl with Turner syndrome diagnosed after 4 years of growth hormone therapy.
 Chen SH, et al.  Eur J Pediatr 165:344-345, 2006.
8.Growth hormone treatment and adverse evens in Prader-Willi syndrome: data from KIGS (the Pfizer International Growth Database).
 Craig ME, et al. Clin Endocrinol 63:178-185, 2006.

平成19年度

1.P1-135 ホジキンリンパ腫後の成長ホルモン治療終了後にEBV関連リンパ腫を発症した1例.
 上田 修、他(旭川医科大 小児科).
 第110回日本小児科学会学術集会.H19年4月20-22日、京都.
2.P2-07 成長ホルモン治療既往の下垂体機能低下症に発症した腎障害の3例.
 西 理、他(和歌山県立医大 病態栄養治療学、第1内科).
  第17回臨床内分泌Update.H19年3月10-11日、東京.


4.成長ホルモン治療と白血病 (分担:西)

 現在までに成長ホルモン治療に関連して発生した白血病について調査を行ったところ以下の表のように男児18例女児5例の23例の報告があった(別表)。うち8例では貧血や放射線暴露などの危険因子が同定されたが、15例では危険因子は不明であった。
表1




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