指定課題研究報告
成長ホルモン治療のアドバース・イベントの調査研究



Prader-Willi症候群に対する成長ホルモン療法におけるアドバースイベント
  −成長ホルモン療法と側弯症の関連について−
永井敏郎(獨協医科大学越谷病院小児科)



はじめに:

 成長ホルモン(GH)療法がプラダー・ウイリー症候群(PWS)の低身長に対して適応され、すでに5年が経過し、様々な良い効果が報告されてきている。しかし、GH治療が側弯症を誘発あるいは増悪させる可能性が問題になってきている。今回われわれは、GH療法と側弯症の関係を検討した。


対象と方法:

 獨協医科大学越谷病院小児科でフォロー中の72名の患者(男性46名、女性26名、年齢1歳から49歳)を対象に、GH治療と側弯症の関係を検討した。対象の72名中、GH療法を受けた者41名、受けなかった者31名である。コブ角は原則6か月間で隔熟達した1名の医師が計測した。


結果と考察:

 72名中33名(45.8%)にコブ角10度以上の側弯症を認めた。側弯症は、GH療法を受けた41名中20名(48.8%)に、GH療法を受けなかった31名中13名(41.9%)に認められた。この頻度には、統計学的有意差は認められなかった。GH療法開始後1年目の身長増加の比較では、GH療法受けた群と受けなかった群ではそれぞれ、8.59±1.92 cmと10.70±2.54 cmであった。この両群間には、p<0.001の有意差を認め、少なくとも身長の加速が側弯症を悪化させているとは言えなかった。GH開始年齢と側弯症発症との関係では、側弯症のない群にGH療法開始年齢が有意に低かった(p=0.029)。GH療法を受けている群で、側弯症を認めた20名のコブ角の経過では、10名が変動なし、6名が増悪、1名増悪軽快、3名が軽快した。多くの患者で年齢の進行とともにGH療法の有無に関わらず側弯症が出現した。これらの所見は、GH療法は、身長増加をもたらすが、必ずしも側弯症を誘発するとは言えず、GH療法の早期開始が側弯症増悪因子になっているとも言えなかった。


まとめ:

 PWS患者での側弯症発生頻度は高い。しかし、GH療法有無での側弯症発生頻度には差はなかった。GH療法に伴う成長加速が側弯症の頻度を増加させない。GH療法開始時期が早期である事が必ずしも側弯症を誘発しない。GH療法で側弯症増悪させる可能性は残るが、逆に少なくとも一部の患者では側弯症が軽快した。


文献

  T Nagai, K Obata, N Murakami, Y Katada, E Takahashi, N Yoshino, Y Tomita, R Sakuta, N Niikawa. Effects of Growth Hormone Therapy for Scoliosis in Patients with Prader-Willi Syndrome. Am J Med Genet (submission)
        
 
  Nishi Y, Tanaka T, Fujieda K, Hanew K, Igarashi Y, Tachibana K, Yokoya S, Tanaka K. 1998. Slipped capital femoral epiphysis, Perthes' disease and scoliosis in children with growth hormone deficiency. Endocr J 45 (Suppl):S167-169.
        
 
  Wang ED, Drummond DS, Dormans JP, Moshang T, Davidson RS, Gruccio D. 1997. Scoliosis in patients treated with growth hormone. J Pediatr Orthop 17:708-711.
        
 
  Willner S, Nelsson KO, Kastrup K, Bergstrand CG. 1976. Growth hormone and somatomedine A in girls with adolescent idiopathic scoliosis. Acta Pediatr Scand 65:547-552.
        
 




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