指定課題研究報告
成長ホルモン治療のアドバース・イベントの調査研究



成長ホルモン治療のアドバース・イベントに関する研究
主任研究者田中 弘之(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
 谷澤 隆邦(兵庫医科大学小児科)
 谷澤 隆邦(兵庫医科大学小児科)
 西  美和(広島赤十字・原爆病院小児科)
 齋藤 友博(国立成育医療センター研究所・成育疫学研究室)
 佐藤 真理(国立成育医療センター内分泌・代謝科)
 寺本 明(日本医科大学脳神経外科)
 永井 敏郎(獨協医科大学越谷病院小児科)
横谷 進(虎の門病院小児科)



成長ホルモン治療に関するアドバース・イベント(AE)について、以下の研究を行った。

1. 治療成績報告書に記載されたAE情報の抽出
成長ホルモン分泌不全性低身長症、ターナー症候群、軟骨異栄養症、慢性腎不全、プラダー・ウイリー症候群のAE(分担:西、田中、谷澤、永井)
2.文献からのAE情報の集積(分担:西、寺本、谷澤)
 


1. 治療成績報告書に記載されたAE情報の抽出


(1) 成長ホルモン分泌不全性低身長症(GHD)とターナー症候群
 2004(H16)年度(2004年1月1日〜12月31日受付)の治療成績報告書に記載されたAE全て以下に記載しコメントを付けた(表1、表2)。



特徴
 上記の表に示すように治療成績報告書には112件のアドバースイベントが記載されていた。内22件で成長ホルモンの投与が中止されていた。脳腫瘍の発生または再発は3件、骨に関するアドバースイベントは19件報告されており、内10件は側弯など脊椎の変形であり、残りは骨端症など成長軟骨に関連するものであった。腎に関するアドバースイベントは10件で6件が蛋白尿に関するものであった。この他、特記すべきものとしては幻覚などの精神症状をきたしたものが2件あった。





 全部で15件のアドバースイベントの報告があったが、高尿酸血症が3件、血尿が3件、蛋白尿が2件であった。また、GHDと同様に精神症状の報告が1件あった。

(2)軟骨無形成症のGH療法中のアドバースイベントの発症に関する検討



 軟骨無形成症においては上記の4件の報告があった。

(3)慢性腎不全に対するGH治療のAE
 本年度 報告されたアドバースイベントは10歳の男児に見られた腹膜炎1件のみであった。
 以下に過去に登録されたアドバースイベントの詳細をまとめる。




(4)Prader-Willi症候群に対する成長ホルモン療法のAE
 本年度登録があったのは以下の3件であり1件で成長ホルモン投与が中止されている。





2.文献からのAE情報の集積

2004年(H16年)度文献からのAdverse Events情報 (西)

1.  Long-term mortality in the United States cohort of pituitary-derived growth hormone recipients.
 Mills JL, et al. J Pediatr 144:430-436, 2004.
  1963-1985年:小児6107例(pGH投与患児の97.4%)
   死亡に関する情報は医師、親にインタビューして得た。
  1963−1996年に433例の死亡があり、マッチさせた一般集団と比較すると、相対リスクは3.8 (P<0.0001)
   死亡原因: 低血糖、 急性副腎不全、腫瘍によるもの
         Creutzfeld-Jacob diseaseは26例
   要注意:急性副腎不全
        
 
2.  Sudden death in growth hormone-treated children with Prader-Willi syndrome
 van Vliet G, et al. J Pediatr 144:129-131, 2004 .
  4歳男児.GH治療開始9週間後、睡眠中に突然死、sleep apnea?
   2002年にも2例のPWSもGH治療中に死亡
   0.7歳男児: milk aspiration ?  6.5歳男児: Bronchopneumonia
        
 
3.  P-93 Prader-Willi症候群に対する成長ホルモン療法と側弯症に関する検討
 馬場 一徳、他(静岡県立こども病院)
  第38回日本小児内分泌学会、H16年9月22-24日、神戸.
  GH投与前・中に側弯症を認めた6例
  GH治療による急激な身長の伸びや筋肉量の増加が、側弯症のリスクファクターか?
        
 
4.  P-94 Chiari 奇形I 型を伴うGH分泌不全患者へのGH投与効果と安全性の検討
 中村 俊郎、他(熊大 小児科、他)
  第38回日本小児内分泌学会、H16年9月22-24日、神戸.
  4例中3例にGH治療. 2例は身長は伸びた、Chiari 奇形の悪化なし
        
 
5.  P-96 GHDを呈したDown症候群における成長ホルモン治療がQOLに与える影響
 吉田 由香、他.(関西医科大学 小児科、他)
  第38回日本小児内分泌学会、H16年9月22-24日、神戸.
  10例のGHD. 身長は伸びた. 運動発達(特に活動性)の向上が認められた
        
 
6.  P-97 成長ホルモン治療中に思春期早発症を認めたSFD低身長の一例
 山口 哲也、他 (横浜市立大学 小児科、他)
  第38回日本小児内分泌学会、H16年9月22-24日、神戸.
  男児、 在胎39週、出生体重 1994g、身長 −2〜−8SD
  身長は−4.5SD前後になったが、10歳8ヵ月時に思春期発来、骨年齢促進あり
  LHRHアナログ治療開始
        
 
7.  P-18 Dyskeratosis congenital treated with growth hormone.
 Kyoko Kataoka, et al. (岡大 小児科)
  第18回小児成長障害研究会、H16年10月30日、東京
  9歳男児、GH治療によりleukoplakiaは悪化→GH治療中止
        
 

 GH投与による身長の急激な増加や筋力の増加が側弯を増悪させる因子であることは想像に難くない。GHDにおけるアドバースイベントにおいても同様に骨格系のアドバースイベントでは側弯の増悪が最も多いものであった。治療前の側弯の有無が重要であろうと考えられる。今後の検討が必要である。
 PWSにおける睡眠中の突然死も注目すべき問題であるが、本年度成長化学協会の登録上は見出しえなかった。今後も発生について注意していくべきであろう。


【目次へ戻る】