指定課題研究報告
「成長ホルモン療法の治療効果に及ぼす諸因子の解析に関する研究」


主任研究者 横谷 進(虎の門病院小児科)
 
島津 章 (国立京都病院臨床研究部)
立花 克孝 (神奈川県立こども医療センター内分泌代謝科)
田中 弘之 (岡山大学医学部小児科)
谷澤 隆邦 (兵庫医科大学小児科)
寺本 明 (日本医科大学脳神経外科)
西 美和 (広島赤十字原爆病院小児科)
長谷川 行洋 (都立清瀬小児病院内分泌代謝科)
羽ニ生 邦彦 (羽ニ生クリニック)
肥塚 直美 (東京女子医科大学第二内科)
平野 岳毅 (平野こどもクリニック)
藤田 敬之助 (大阪市立総合医療センター小児内科)


 成長ホルモン療法の治療効果に及ぼす諸因子の研究のうち、次の3つにつき報告する。

  1. 慢性腎不全性低身長症の治療成績の検討(分担:谷澤)
  2. Down症に対するGH治療適応に関するアンケート調査(分担:長谷川)
  3. 成長ホルモン分泌不全性低身長患者で、副腎皮質ステロイド大量療法を受けている患者の成長反応について ―6年間の検討―(分担:平野)



1. 慢性腎不全性低身長症の治療成績の検討

【対象患児】

 1997年9月から2002年11月30日までに成長科学協会に申請された慢性腎不全性低身長症314例のうち適応があると判定された306例を対象に検討した。

【対象の臨床像】

 申請時の腎機能は内因性クレアチニンクリアランス(Ccr)が10ml/min/1.73u未満の末期腎不全児が47%を占める。申請時年齢は12〜13歳が最多である。3歳未満が33例(10.8%)である。慢性腎不全に至った原因疾患は腎低形成/異形成などの腎・尿路奇形が68%の多数を占める。

【長期治療効果】

 今回は2年以上成長ホルモン治療を施行した男児32例と女児16例の身長SDSの推移を検討した(図1,2)。男児では身長SDSに低下を認めたのは5例で、それ以外は低下を認めず、-2SD以内に改善した例が8例である。思春期前に治療を開始した例が改善傾向が強い。一方、女児では男児に比べて身長SDSの改善は少なく、思春期後例では悪化傾向が強い。

【考案】

 わが国の慢性腎不全児は腎移植例が欧米に比して少なく、長期透析を余儀なくされている症例が多い。したがって、長期透析に伴う成長障害が避けられず、従来の低蛋白・低リン食治療、活性型ビタミンD薬、アルカリ療法などの内科的保存的治療に加えて成長ホルモン治療は有用である。しかし、現行のわが国の健康保険適用での投与量は初期6か月間は補充量としての0.175mg/kg/週しか認められず、再申請にて薬用量である0.35 mg/kg/週への増量が許可されている。欧米に比して投与量が少ないことも効果が得られにくい一因である。増量基準の申請を促すために患児を取り扱う腎小児科医の認識を啓発する必要もある。また、社会資源の活用面では、現行での成長ホルモン治療は透析児では医療費負担は免除されるが、保存期慢性腎不全児では外来での治療は都市部在住者を除き援助対象とはならず、健康保険利用の高額医療でしか治療できないという矛盾もはらんでいる。


図1 長期(≧2年)ヒト成長ホルモン治療の効果 男児 32 例



図2 長期(≧2年)ヒト成長ホルモン治療の効果 女児 16 例


2. Down症に対するGH治療適応に関するアンケート調査

 Down症に対しGH治療を試みた成績が散発的にみられるが、治療適応については国内で議論がされたことがない。今回は成長ホルモン治療研究専門委員会、地区委員の136名に別紙のような治療適応に関するアンケートを2002年12月に行った。77名(回答率56.6%)から回答を得たので、質問事項とともに表3にまとめて記載した。




3. 成長ホルモン分泌不全性低身長患者で、副腎皮質ステロイド大量療法を受けている患者の成長反応について ―6年間の検討―

【対象】

 成長科学協会の登録患者から、他の疾患の治療の目的で副腎皮質ステロイドの大量投与を受けている成長ホルモン分泌不全性低身長(GHD)患者68人(男児54人、女児14人)を対象とした。ステロイド大量の定義は、プレドニンまたは同力価で1日5mg以上とし、さらに、補充療法としてのステロイド投与を除外するために、皮膚筋炎(3人)、若年性関節リウマチ(9人)、ネフローゼ症候群(52人)、SLE(4人)診断のある患者のみを対象とした。

【結果】

 治療前データでは、治療開始が遅く、開始時身長は極めて低く、肥満度は高かった(Table 2)。身長のSDスコア(HSDS)の変化では、最初の3年間は改善が認められたが、以後は全く変化は見られなかった(Fig.3)。成長率(HV)の変化でも1年目の治療では暦年齢相当HVを超えたが、以後はそれを下回っていた(Fig.4)。
 体重あたりのステロイド量と成長反応(HVSDS)は負の有意な相関があった。つまり、ステロイド量が多くなると、成長抑制が起こった(Fig.5)。

【結果】

 ステロイド大量療法のGHD患者への効果は、治療後1-2年間は存在するが、その後3年を越えると反応が乏しいことが示された。これは、最近、Allen and S. Bechtoldらが、2年間の反応を見て良好と結論しているが、我々の6年間の検討では、成長反応は不良であることが示された。





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