指定課題研究報告
「成人成長ホルモン欠乏症患者の転帰および診断・治療に関する研究」の研究概要
對馬 敏夫1、島津 章2、肥塚直美1、村上宜男3、加治秀介4 東京女子医科大学内分泌センター1、国立京都病院2、島根医大第1内科3、兵庫県立看護大学4
はじめに
成長科学協会の指定研究課題「成人成長ホルモン欠乏症患者の転帰および診断・治療に関する研究」は平成13年度で4年を経過した。この間の成績を簡単に述べる。
1) 診断については初年度に成人成長ホルモン欠損症(GHD)の診断指針を作成した(平成9年度報告書)。本年度はこれを改訂する予定であったが、厚生省間脳下垂体機能障害調査研究班でも新たに診断基準を作成した。この案が近く発表される予定である。本研究班で作成した診断指針との間には基本的に差はないものの、二つの指針案の存在は混乱を招くお恐れがあるため、今回は指針の改訂を見送ることとした。
2) GHD 患者の現状と転帰については既に平成5年度に厚生省班会議 (間脳下垂体機能障害調査研究班) で全国調査されたアンケート結果とその後に集積したデータを併せてに基づいて検討した。更に本研究班としてもAGHDの現状についてアンケート調査を施行した。これらの結果得られた成績としては 肥満 (体脂肪率の増加)、高脂血症の頻度が年齢、性をマッチさせた健常人よりもの有意に高いという欧米で得られた成績が得られた。更に肝機能障害が高頻度に存在すること、その大部分は脂肪肝によるものであることが判明した。その他の合併症としては脳血管障害(脳梗塞)、心臓血管障害(狭心症、心筋梗塞)の発症率も有意に高く、これも欧米での成績とほぼ一致するものであった。その最終予後については観察期間が十分でないため結論が得られなかった。しかし死亡原因でみると脳血管障害、心血管障害による死亡率が多いことはなかった。QOL については大部分が殆どが日常生活に支障がないというアンケート回答であった。3) 治療については研究班単独での治験が困難であり、今後の課題として残されている。既に外国ではGHDに対するGH治療が行われており、同様な効果が期待される。
3) その他班員の個別研究の成績としてはAGHD診断における血中IGFBP3測定の有効性、AGHD における頚動脈内中膜肥厚、血中レプチン濃度の増加と、GHによるレプチン産生の抑制、GH による骨代謝回転の増加などを報告した。